前の記事で確率測度や、確率測度から定義される確率分布関数というものを紹介しました。今回はこの記事で少しだけ書いた中心極限定理をきちんと説明するために確率測度の例や確率測度の弱収束について紹介したいと思います。
●確率分布関数から確率測度を定義する
まず、前の記事で確率測度から定義した確率分布関数は以下の定義を満たしていていることが分かります。
前の記事では確率測度から確率分布関数を定義しましたが、逆に上の定義を満たす確率分布関数から確率測度を定義することができます。
例えば、前の記事で紹介したヘビサイド関数は確率分布関数の性質を満たしていて、これから次のような性質を満たす確率測度を定義できます。
この性質を満たす確率測度はディラック測度と呼ばれています。
また、確率分布関数の凸結合も確率分布関数になります。
離散確率分布は次のようにいくつかのヘビサイド関数(確率分布関数)を凸結合したものとみなすことができます。
ヘビサイド関数からディラック測度が定義されたのでいくつかのヘビサイド関数の凸結合から定義される確率測度は重み付けられたディラック測度というような感じになっています。前の記事で導入したディラックのデルタ関数はディラック測度から定義された確率密度関数とみなすことができます。
確率変数が連続値を取る場合も確率分布関数から確率測度を定義できます。例えば、ガウス分布からは次のような感じです。
●確率測度の列の弱収束
実数の列が与えられたどんな実数に収束するかを調べることができるように、確率測度の列が与えらたらどんな確率測度に収束するかを調べることができます。ただし、確率論の中でよく使われる確率測度の列の収束の意味は次の弱収束と言われれるものです。
ガウス分布の確率密度関数は分散を0に限りなく近付けるとディラックのデルタ関数ぽいと前の記事で紹介しましたが、これと同様にガウス測度はディラック測度に収束することが示せます。ただし、収束は次のように弱収束の意味です。
●確率分布関数の分布収束
確率分布関数の列の分布収束は次のように定義されます。
確率測度の弱収束と確率分布関数の分布収束の間には次の関係があります。
この定理は確率測度の列の弱収束という難しそうなものが、確率分布関数の列の分布収束という簡単そうなものに等価だということを意味しています。
●参考文献
記事を書くにあたって参考にした文献です。
(1) 分かりやすい。
(2) 証明が丁寧に書いている。
Theory of Probability and Random Processes (Universitext)
- 作者: Leonid Koralov,Yakov G. Sinai
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●予告
中心極限定理について説明します。