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初級Mathマニアの寝言

数学は色々なところで応用可能であり、多くの人が数学の抽象的な概念の意味や意義を鮮明に知ることができれば今まで以上に面白い物や仕組みが生まれるかもしれません。このブログは数学を専門にしない人のために抽象的な概念の意味や意義を分かりやすく説明することを目的としています。数学を使って何かしたい人のお役に立てたら幸いです。

商集合

この記事では、商集合という概念について説明します。この概念を理解しないと、少し高度な数学は理解できないというぐらい重要な概念です。

●同値関係

同値関係という概念を使って商集合は定義されます。同値関係よりも一般的な二項関係の概念は以下の通りです。

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 (a,b)\in R のとき、 aRb と書きます。

例えば、  \leq := \{ (a,b)\in {\bf R}\times {\bf R} | a-bは0以下\}二項関係であり、 (1,2)\in \leq なので  1\leq 2 と書こうというわけです。

 S を任意の集合として、 \mathcal{P}(S) S のベキ集合として、 \subset := \{ (A,B)\in \mathcal{P}(S)\times \mathcal{P}(S)\,|\, a\in B\,\, \forall a\in A\} とすると  \subset二項関係であり、 \{1,2\}\times \{1,2,3\} \in \subset となるので、 \{1,2\} \subset \{1,2,3\} と書こうというわけです。

 {\rm People} をすべての人間の集合として、 \Rightarrow := \{ (x,y)\in {\rm People} \times {\rm People}\, |\, x\,\, {\rm loves}\,\, y\} と定義すると、 \Rightarrow二項関係であり、 {\rm 私} \Rightarrow 妻 かつ  妻 \Rightarrow 私 が成り立ちます。

同値関係は以下のように定義されます。

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例えば、整数全体の集合  {\bf Z} には以下のような同値関係が考えられます。

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上で定義した二項関係  \leq は同値関係になっていません。なぜなら、対称律が成り立たないためです。実際に、 1\leq 2 ですが、 2\leq 1 とはならないため、対称律は成り立たないことが分かります。また、上で定義した \subset は同値関係ではありません。なぜなら、対称律を満たさないからです。さらに、上で定義した  \Rightarrow は同値関係になりません。なぜなら、反射律、対称律、推移律が成り立ちそうにないからです(特に対称律が成り立たないのは残念です)。

●商集合

集合に同値関係を定めることで、その集合を分割できます。対象としている集合の要素で同値なものを集めた集合を同値類と呼びます。

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 例えば、上で整数全体の集合  {\bf Z} 上に同値関係  \sim_2 を定義しましたが、これを使うと以下の同値類が作れます。

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同値関係  \sim_2 の定義から以下が成り立つことが分かります。

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これは同値関係  \sim_2 のもとでは、整数全体の集合  {\bf Z} は [0] と [1] によってなる事を意味しています。つまり、以下が成り立ちます。

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このように、集合  S に同値関係  \sim が定められると、その集合を同値類によって直和分解できます。

同値類全体の集合を商集合と呼び、以下のように書きます。

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例えば、 {\bf Z} \sim_2 による商集合は以下のようになります。

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このように商集合は集合の集合になっています。

●同値関係による写像の分解

 S/\sim の要素である  a\in S の同値類を  \bar{a} と書くことにすると、以下の  S S/\sim への自然な写像と呼ばれる写像を定義できます。

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二つの集合間の写像が与えられると、その写像を使って同値関係を以下のように定義できます。

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この同値関係を使うことで、写像が以下のように分解できます。

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とくに、写像  f全射であるなら以下の可換図式が得られます。

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●参考文献

 記事を書くにあたって、以下の本を参考にしました。

集合・位相入門

集合・位相入門