初級Mathマニアの寝言

数学は色々なところで応用可能であり、多くの人が数学の抽象的な概念の意味や意義を鮮明に知ることができれば今まで以上に面白い物や仕組みが生まれるかもしれません。このブログは数学を専門にしない人のために抽象的な概念の意味や意義を分かりやすく説明することを目的としています。数学を使って何かしたい人のお役に立てたら幸いです。

最小平均二乗誤差推定値は条件付き期待値

この記事では、下図のように  y を観測してパラメータ  x を推定しようとしたとき、推定したいパラメータ  x と推定値  \hat{x} の二乗誤差  ||x-\hat{x}||^2 の期待値が最小となる推定値(最小平均二乗誤差推定値 \hat{x}条件付き期待値  E(x|y) で与えられ、この推定値は不偏推定値になることを説明します。f:id:ogyahogya:20171108130548p:plain

ここでは、 x\in {\bf R}^n,  y\in {\bf R}^p,  \hat{x}\in {\bf R}^n として、 ||\cdot|| をユークリッドノルムとします。

推定したいパラメータ  xと観測値  y は確率変数だと考える。そうすると、推定値  \hat{x} も確率変数だと考えるのが自然になる。

この記事の中では、推定したいパラメータ  xと観測値  y は確率変数だと考えます。そのとき、推定値  \hat{x} も確率変数だと考えるのが自然になります。これらの理由を以下で説明します。

推定したいパラメータ  x は全知全能の神様にとっては確定値かもしれませんが、「 x \hat{x} か?」と思っている人にとっては確定値ではなく、確率的にしか決められないものかもしれません。推定したいパラメータ  x は確率的に定まるものだと考えることは、数学的には、 x は確率変数だと考えることに相当します。確率変数は下の記事で紹介しています。

ogyahogya.hatenablog.com

推定したいパラメータ  x が確率変数だと考えると、観測値  y も確率変数だと考えることが自然なことが多いです。実際に、観測値は  y=x+v というように、確率変数である  x に確率変数である雑音  v が加算されたものかもしれず、もしそうなら観測値  y  は確率変数となるためです。他にも  y x の関数として表現される多くの場合に、 y は確率変数ということになります。

推定値  \hat{x} は観測値  y の関数だと考えて、関数  f を用いて  \hat{x} = f(y) という関係があると考えるのが自然です。なぜなら、推定値  \hat{x} は観測値  y を参考にして決定するはずだからです。したがって、観測値  y が確率変数なら  \hat{x} も確率変数だと考えることができます(関数  f が可測関数という連続関数を含む応用上とても広いクラスの関数なら、 y が確率変数のときに  f(y) も確率変数となる)。

なぜ  E(||x-\hat{x}||^2) を最小化するのか

この記事の冒頭で、二乗誤差  ||x-\hat{x}||^2 の「期待値」を最小にする  \hat{x} は条件付き期待値  E(x|y) だということを紹介すると書きましたが、なぜ二乗誤差  ||x-\hat{x}||^2 そのものではなく、その「期待値」を最小にする  \hat{x} を考えるのでしょうか?その理由は、二乗誤差  ||x-\hat{x}||^2 \hat{x}=x のときに最小値0となりますが、ここでは  x を確率変数だと考えるため  \hat{x}=x とすることができない上に、 x が不明なので、どうやって  ||x-\hat{x}||^2 を小さくできるかも分からないためです。そのため、代わりに二乗誤差の期待値  E(||x-\hat{x}||^2) の最小化を考えるのです。

 E(||x-\hat{x}||^2) を最小化するとは、もっと正確にはどういうことなのか

二乗誤差の期待値  E(||x-\hat{x}||^2) は関係式  \hat{x}=f(y) の関数  f が与えられたら、次のように計算できます。

\begin{align*} E(||x-\hat{x}||^2) &= E(||x-f(y)||^2) \\ &= \int_{ {\bf R}^p } \int_{ {\bf R}^n} ||x-f(y)||^2 p(x,y) dx dy \end{align*}

この式を見れば分かるように、二乗誤差の期待値  E(||x-\hat{x}||^2) は同時確率分布  p(x,y) が与えられたら関数  f の関数なので、 E(||x-\hat{x}||^2)

\begin{align*} R(f) := E(||x-\hat{x}||^2) \end{align*}

と書けます。このように、二乗誤差の期待値  E(||x-\hat{x}||^2)を最小化するということは、同時確率分布  p(x,y) が任意に与えられたときに関数  R(f) を最小化する関数  f を求めることを意味しています。

※関数  R は関数  f の関数だということから、汎関数(関数の関数)だということになります。

汎関数  R(f) を最小にする関数  f(y) は条件付き期待値  E(x|y) になる

二乗誤差の期待値  E(||x-\hat{x}||^2) 、つまり汎関数  R(f) の最小化を考えてみましょう。まず、 R(f)

\begin{align*} R(f)  &= \int_{ {\bf R}^p } \int_{ {\bf R}^n} ||x-f(y)||^2 p(x,y) dx dy \\ &=\int_{ {\bf R}^p } R_c(f)  p(y) dy \end{align*}

となることに注意します。ここで、

\begin{align*} R_c(f):= \int_{ {\bf R}^n} ||x-f(y)||^2 p(x|y) dx =E(||x-f(y)||^2 | y) \end{align*}

です。

実は、 R(f) を最小にする  f R_c(f) を最小にする  f は一致します。したがって、 R(f) を最小化する  f の代わりに、 R_c(f) を最小化する  f を求めれば良いということになります。

実際に、 R_c(f) を計算してみると以下のようになります。\begin{align*} R_c(f) &= E(||x-f(y)||^2 | y) \\ &= E(|| (x-E(x|y)) + (E(x|y)-f(y))||^2 | y) \\ &= E(||x-E(x|y)||^2 | y) + ||E(x|y)-f(y)||^2 \\ &\geq E(||x-E(x|y)||^2 | y) \end{align*}

最後の不等式で等号が成り立つのは  f(y) = E(x|y) のときなので、 R_c(f) を最小にする関数  f(y) は条件付き期待値  E(x|y):= \int_{{\bf R}^n} x p(x|y) dx だということが分かります。よって、最小平均二乗誤差推定値は  \hat{x} = E(x|y) となります。

※上の証明の中で突然  E(x|y) が出てきました。これは、最小平均二乗誤差推定値は  \hat{x} = E(x|y) となることを知っていないと思いつかないかもしれません。このことを知らないとして、関数  R_c を最小にする関数  f を求めるためには微分  \frac{\partial R_c}{\partial f}=0 を満たす f を求めれば良さそうです。実際に、このへんの話はカルマンフィルタ関係の本によく載っているのですが、多くの本のなかで微分  \frac{\partial R_c}{\partial f}=0 を満たす f を求めています。が、実はこの微分といっているものは通常の微分だと考えることができません。なぜなら  f は数値ではなく関数だからです。ということで、微分  \frac{\partial R_c}{\partial f} を計算するといっても通常の意味の微分は計算できません。では、どうするかというと汎関数  R_c変分(汎関数微分)を計算し、その変分がゼロになる関数  f が答えだということになります。つまり、力学でオイラー・ラグランジュ方程式を導出する際にラグランジアンの作用積分の変分を計算したように、汎関数  R_c の変分を計算すれば良いということになります。では実際に汎関数  R_c の変分を計算してみましょう。汎関数   R_c の点  f における  h 方向への微分は

\begin{align*} \delta R_c(f)[h] := \lim_{\epsilon\rightarrow 0} \frac{R_c (f+\epsilon h) -R_c(f)}{\epsilon} \end{align*} となります(上記の  \delta R_c(f) がゼロとなる関数  f を見つけることを変分問題  \delta R_c(f)=0 と書く)。 汎関数  R_c(f) の定義から、

\begin{align*} R_c(f+\epsilon h) -R_c(f) = \int_{{\bf R}^n} \left( 2\epsilon (x-f(y))^T h(y) + \epsilon^2 ||h(y)||^2 \right) p(x|y) dx \end{align*}

となります。よって、

\begin{align*} \delta R_c(f)[h] &= 2 \int_{ {\bf R}^n} (x-f(y))^T h(y) p(x|y) dx \\ &= 2(E(x|y)-f(y))^T h(y) \end{align*}

ということになります。したがって、 f(y)=E(x|y) のとき  \delta R_c(f)=0 となることが分かりました。

最小平均二乗誤差推定値  \hat{x} = E(x|y) は不偏推定値

 一般に、推定したいパラメータ  x と推定値  \hat{x} の誤差の期待値  E(x-\hat{x}) がゼロになるとき推定値  \hat{x} は推定したいパラメータ  x の不偏推定値だと言います。つまり、推定したいパラメータの期待値と推定値の期待値が一致しているときに、その推定値は不偏だと言うのです。

最小平均二乗誤差推定値  \hat{x}=E(x|y) は次のように不偏推定値だということが分かります。

\begin{align*} E(\hat{x}) &= E( E(x|y)) \\ &= \int_{{\bf R}^p} \left( \int_{{\bf R}^n} x p(x|y) dx \right) p(y) dy \\ &= \int_{{\bf R}^p} \int_{{\bf R}^n} x p(x,y) dx dy \\ &= \int_{ {\bf R}^n} x \int_{ {\bf R}^p} p(x,y) dy dx\\ &= \int_{{\bf R}^n} x p(x) dx = E(x) \end{align*}

参考文献

記事を書くにあたって参考にした文献です。

 (1) 理論的なことがしっかり書いてる。

応用カルマンフィルタ

応用カルマンフィルタ

 

この記事の中では、二乗誤差  ||x-\hat{x}||^2 の期待値の最小化を考えましたが、この本の中では、他にも絶対誤差の期待値や一様誤差の期待値の最小化も考えられており、条件付き確率分布  p(x|y)ガウス分布に従うなら、絶対誤差と一様誤差の期待値の最小値を与える関数は二乗誤差の期待値の最小値を与える条件付き期待値  E(x|y) に一致することが説明されています。ということで、条件付き期待値  E(x|y) は他の評価指標を使っても最も良い推定値になることがあるということが分かります。

ガウス分布は、以下の記事で説明したように中心極限定理と密接に関連した確率分布で応用上よくでてきます。

ogyahogya.hatenablog.com(2) 上の参考文献と同じ著者の本。汎関数の変分を計算すべきところを普通の微分のように計算しているのは誤りであることに注意。この本のように英語の本でも普通の微分のように計算しているものが多々あります。。。

非線形カルマンフィルタ

非線形カルマンフィルタ

 

 

 

可制御性グラミアンと可観測性グラミアン

対象とする線形システム

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の可制御性と可観測性の定義は

ogyahogya.hatenablog.com

で紹介しましたが、この記事では可制御性と可観測性の「大きさ」を定量的に測る手段を紹介します。線形システムについては

ogyahogya.hatenablog.com

で紹介しています。この記事の中では行列 A を安定、つまり、 A のすべての固有値の実部は負であると仮定します。

入力エネルギー最小化問題

まず、線形写像 \Psi_c: L^2(-\infty,0] \rightarrow {\bf R}^n

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と定義します。ここで、 L^2(-\infty,0] は区間 (-\infty,0] 上で定義された2乗可積分な関数全体の線形空間です。このような空間については、

ogyahogya.hatenablog.com

でも紹介しています。この \Psi_c(u) は無限の過去 t=-\infty に状態が0であるときの現在 t=0の状態 x(0) を表していると解釈できます。実際に、 \lim_{t\rightarrow -\infty} x(t) =0 とすると、行列 A が安定なので、

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となるからです。

 v_1, v_2\in L^2(-\infty,0] とするとき、 \langle v_1, v_2 \rangle_2:= \int_{-\infty}^0 v_1^T(t) v_2(t) dt によって \langle \cdot, \cdot \rangle_2 を定義し、 ||v_1||_2:=\sqrt{\langle v_1, v_1 \rangle_2} によって ||\cdot ||_2 を定義します。

このとき、次の入力エネルギー最小化問題を考えます。

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ただし、 ||\cdot|| はユークリッドノルムを表します。この問題は、「状態を原点から単位球面上に到達させることが可能な2乗可積分な入力の中で、エネルギーが最小になるものを求めよ。」ということを意味しています。

可制御性グラミアン

上の入力エネルギー最小化問題と次の可制御性グラミアン

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 は密接な関係があります。ここでは、その関係を見るための準備をします。

線形作用素 \Psi_c と行列 W_c の間には次の関係が成り立ちます。

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ここで、 \Psi_c^* \Psi_c共役作用素です。共役作用素はこちらで説明しましたので、興味がありましたら参照してください。

ogyahogya.hatenablog.com

上の関係が成り立つことは次のように確認できます。

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任意の \xi\in {\bf R}^n に対して、上記の式が成り立つことから W_c=\Psi_c\Psi_c^* が成り立つことが証明できました。

可制御性グラミアンの表式から W_c は半正定値対称行列だということが分かります。実は、線形システムが可制御であることと、 W_c が正定値対称行列であることは等価です。ここでは簡単のために、線形システムは可制御であるとして話を進めます。

直交射影

 入力エネルギー最小化問題の解と可制御性グラミアンの関係を、すっきりと理解するために、直交射影の概念を紹介します。

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直交射影には、次の性質があります。

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入力エネルギー最小化問題の解と可制御性グラミアンの関係

入力エネルギー最小化問題の解は、次のように可制御性グラミアン W_c を用いて表現できることが分かります。

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実は、ある直交射影 P: L^2(-\infty,0] \rightarrow L^2(-\infty,0] が存在し、(※)を満たす任意の u\in L^2(\infty,0] に対して、 Pu=u_{最適} となって Pu も(※)を満たすことが示せます。直交射影の定義の下で示したように、 ||Pu||_2 \leq ||u||_2 なので、上の主張が成り立つということになります。

そのような直交射影 P

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で与えられます。 Pu が(※)を満たすことは、

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から分かります。さらに、★が直交射影であることも少し計算すれば示せます。

さらに、入力エネルギーと可制御性グラミアンの間には、次の関係が成り立つことが分かります。

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なお、 W_c の逆行列 W_c^{-1} は、線形システムを可制御であると考えているので存在します。

 可制御性グラミアンの幾何学的解釈

ここでは、入力 u\in L^2(-\infty,0] ( ||u||_2\leq 1) で到達可能な状態を可制御性グラミアン W_c を用いて特徴付けます。この特徴付けは次の事実に基づきます。

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上で示したことから、入力 u\in L^2(-\infty,0] ( ||u||_2\leq 1) で到達可能な状態は W_c^{1/2} x ( ||x||\leq 1 )だということが分かりました。

以上のことから「可制御性の大きさ」、すなわち、「制御のしやすさ」と可制御性グラミアン W_c の関係を調べることができます。このことを見るために、単位エネルギー ||u||_2= 1 の入力 u\in L^2(-\infty,0] で到達可能な状態の集合は

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であることに注意しましょう。今、 W_c^{1/2} の固有値を \lambda_1,\lambda_2,\ldots, \lambda_n、対応する正規直交固有ベクトルを v_1,v_2,\ldots,v_n とすると、

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となり、 \mathcal{E}_c は固有ベクトル v_1,v_2,\ldots,v_n の方向を主軸として固有値 \lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n を主値とする楕円であることが分かります。イメージ図は下のような感じです。

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つまり、単位エネルギー ||u||_2= 1 の入力 u\in L^2(-\infty,0] で原点から最も遠くまで到達可能な方向が可制御性グラミアン W_c の最大固有値に対応する固有ベクトルの方向で、2番目に遠くまで到達可能な方向が2番目に大きい固有値に対応する固有ベクトルの方向、3番目に・・・ということになります。言い換えると、最も制御しやすい方向が可制御性グラミアン W_c の最大固有値に対応する固有ベクトルの方向で、最も制御しにくい方向が W_c の最小固有値に対応する固有ベクトルの方向だということです。

以上から、線系システムが可制御であっても、制御のしやすい方向としにくい方向があり、それらを定量的に調べるためには可制御性グラミアン W_c の固有値と固有ベクトルを調べれば良いということが分かりました。

可観測性グラミアン

次に、観測のしやすさを定量的に評価する可観測性グラミアンについて説明します。

今、現在の状態 x(0) x_0 とします。このとき、 \Psi_o:{\bf R}^n\rightarrow [0,\infty)

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で定義します。線形写像 \Psi_o [0,t] 上で入力を u=0 としたときの線形システムの出力値と関係付きます。なぜなら、 y(t) = C\exp (At) x_0 = \Psi_o x_0 が成り立つからです。可制御性グラミアンの時と同様の計算で、 \Psi_o は可観測性グラミアン

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の関係があることが分かります。ここでは、 L^2 [0,\infty) 上に内積を \langle f_1, f_2 \rangle_2 := \int_0^{\infty} f_1(t)^Tf_2(t) dt で定め、ノルムを ||f||_2:= \sqrt{\langle f, f \rangle_2} で定めることにします。すると、出力は y=\Psi_o x_0 のため、出力エネルギーが

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と可観測性グラミアン W_0 を用いて表せることが分かります。可制御性グラミアンの時と同様に、可観測性グラミアン W_o を用いて定義された集合

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は楕円であり、主軸は W_o の固有ベクトルの方向で、主値は固有値の平方根ということになります。これは球面上の状態 x_0 にも「観測のしやすさ 」があり、可観測性グラミアン W_o の最大固有値に対応する固有ベクトルの方向の状態が最も観測しやすく、最小固有値に対応する固有ベクトルの方向の状態が最も観測しにくいという意味になります。(ここで、観測のしやすさを出力エネルギー ||y||_2^2 の大小で解釈しています。)

参考文献

 記事を書くにあたって次の本を参考にしました。

A Course in Robust Control Theory: A Convex Approach (Texts in Applied Mathematics)

A Course in Robust Control Theory: A Convex Approach (Texts in Applied Mathematics)

 

 

行列の指数関数と対数関数

この記事では、行列の指数関数と対数関数について解説します。Lie群とLie環という概念を理解するための準備に相当します。

●行列の内積とノルム

 {\bf R}^{n\times n} をn行n列の実数を成分に持つ行列全体の集合とします。このとき、 {\bf R}^{n\times n} に以下の内積とノルムを導入できます。

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任意の A, B\in {\bf R}^{n\times n} に対して  ||AB||\leq ||A||\cdot ||B|| が成り立つことがコーシー・シュワルツの不等式を使うことで確認できます。

●行列の指数関数

実数  x の指数関数  e^x x=0 の周りでテイラー展開すると  e^x = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{1}{k!} x^k でした。これと形式的に同じになるように行列の指数関数が次のように定義されます。

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右辺の無限級数が収束することは以下のように分かります。

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●行列の指数関数の性質

行列の指数関数の性質は以下の結果を利用して明らかにすることができます。

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解であることは  \gamma(t)=\exp(tX) を左辺と右辺に代入して等しくなることを見れば良いです。一意性は、微分方程式の解の一意性定理から従います。

指数関数の性質を明らかにする前に、二つの行列が可換であるか否かを判定するカッコ積を導入しておきます。

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つまり、 [X,Y]=0 なら  X Y の積は可換です。

次の結果が重要です。

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これを応用して、以下の結果が得られます。

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これは指数関数の値域は一般線形群  {\rm GL}(n,{\bf R}) であることを意味しています。

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さらに、以下の結果も成り立ちます。

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これらより、 X\in {\bf R}^{n\times n} に対して、 \gamma(t)=\exp(tX) は加法群  {\bf R} から  {\rm GL}(n,{\bf R}) への微分可能な準同型写像  \gamma:{\bf R}\rightarrow {\rm GL}(n,{\bf R}) を与えていることが分かります。この曲線  \gamma は実は次のように  \dot{\gamma}(0) を用いて表されます。

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●行列の対数関数

実数  x対数関数  \log x x=1 の周りでテイラー展開すると  \log x = \sum_{k=1}^{\infty} \frac{(-1)^{k-1}}{k} (x-1)^k でした。これと形式的に同じになるように行列の対数関数が次のように定義されます。

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上のように、一般の行列  A\in {\bf R}^{n\times n} に対しては  A単位行列に近いときに対数関数  \log(A) は定義できます。

次の結果は  \exp 0 の近傍と  I_n の近傍の間の微分同相写像であり、逆写像 \log で与えられることを示しています。

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この対数関数を利用して、次の公式が得られます。

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 上の公式は X Y が可換でないときには指数関数  \exp X \exp Y の積にカッコ積  [ X, Y ] の影響が出てくることを表現しています。

●参考文献

 記事を書くにあたって、以下の本を参考にしました。

 

等質空間

この記事では、等質空間の概念について説明します。等質空間なるものをなぜ紹介するかというと、また別の記事で実数を成分に持つ正定値対称行列全体の集合  {\rm Sym}_+(n, {\bf R})幾何学的に考えたいからです。そのような集合を考えたい理由は、 {\rm Sym}_+(n, {\bf R}) 上での最適化問題が工学の問題を考えていると自然に出てくるからです。実際の問題の例はまた今度書くと思いますが、この記事では等質空間について説明します。

●群

等質空間の定義を理解するためには、群の概念を知っている必要がありますので、群の定義を確認しておきましょう。

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実数や整数は馴染みがあると思いますが、実数全体の集合や整数全体の集合は和に関して群になっています(単位元は両方とも0)。しかし、実数全体の集合は積に関して群になっていません。0の逆元が存在しないからです。同様に、整数全体の集合も積に関しては逆元が存在しないので、積に関して群になっていません。

重要な群の例に次の一般線形群があります。

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 {\rm GL}(n,{\bf R}) が通常の行列の積に関して群になっていることは次のように確かめられます。結合法則が成り立つことは、一般線形群の要素が行列であり、行列の積は結合法則を満たすことから言えます。次に、単位元の存在は、単位行列単位元になることから言えます。最後に、逆元の存在ですが、任意の A\in {\rm GL}(n,{\bf R}) に対して \det A\neq 0 なので言えます。

  H\subset G部分群であるとは、 H G の演算によって群になることを言います。一般線形群  {\rm GL}(n,{\bf R}) の部分群の重要な例に次の直交群があります。

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●群の左剰余類への分解

群の部分群が与えられたら以下のように左剰余類というものを考えることができます。

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左剰余類の概念を使って、考えている群の上に以下のように同値関係を導入することができます。

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しがたって、同値関係  \sim による商集合を考えることができます。左剰余類を使った同値関係による商集合は次のように表されることが多いです。

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商集合という概念はこちらの記事で解説しましたので、興味があったら見てください。

 ogyahogya.hatenablog.com

 

●群の作用

群は集合の要素を変換する役目があります。つまり、 G を群、 X を集合とした時、写像  f: G\times X \rightarrow X が与えられるという形で群は登場することが多いです。この  f(g,x) を単に  g\cdot x と書くことにします ( g\in G, x\in X)。

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群の作用でも特に推移的に作用することが大事です。

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定義から、群が集合に推移的に作用していれば、集合の一つの元に群のある要素をかけることによって集合の任意の元が得られることを意味しています。

例えば、一般線形群  {\rm GL}(n,{\bf R}) は正定値対称行列全体の集合  {\rm Sym}_+(n,{\bf R}) に次のように推移的に作用します。

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したがって、 {\rm Sym}_+(n,{\bf R}) の任意の元は  {\rm Sym}_+(n,{\bf R})単位元である単位行列 {\rm GL}(n,{\bf R}) のある元を作用させること得られます。

●等質空間

この記事で解説したかった等質空間は次のように定義されます。

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上で示したことから、正定値対称行列全体の集合  {\rm Sym}_+(n,{\bf R}) は等質空間ということになります。

これから集合が等質空間だったら何が言えるかを見ていきましょう。そのために、まず集合の要素を動かさない群の要素の集まりである等方部分群を定義します。

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集合  X に作用する群  G の等方部分群  G_x は名前の通り、 G の部分群になっています。よって、等方部分群  G_x によって群  G 上に同値関係を導入できて、その商集合  G/G_x を考えることができます。実は等質空間  X は商集合  G/G_x と次のように同一視できます。

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 この定理は次のように証明できます。

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この定理を使うと、以下のように正定値対称行列全体の集合という等質空間を一般線形群の直交群による商集合として考えられることが分かります。

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この事実が正定値対称行列全体の集合のリーマン幾何学を考える際に役立ちます(これについてはそのうち書くと思います。)。

●参考文献

 この記事を書く際に以下の本を参考にしました。

代数概論 (数学選書)

代数概論 (数学選書)

 

 

商集合

この記事では、商集合という概念について説明します。この概念を理解しないと、少し高度な数学は理解できないというぐらい重要な概念です。

●同値関係

同値関係という概念を使って商集合は定義されます。同値関係よりも一般的な二項関係の概念は以下の通りです。

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 (a,b)\in R のとき、 aRb と書きます。

例えば、  \leq := \{ (a,b)\in {\bf R}\times {\bf R} | a-bは0以下\}二項関係であり、 (1,2)\in \leq なので  1\leq 2 と書こうというわけです。

 S を任意の集合として、 \mathcal{P}(S) S のベキ集合として、 \subset := \{ (A,B)\in \mathcal{P}(S)\times \mathcal{P}(S)\,|\, a\in B\,\, \forall a\in A\} とすると  \subset二項関係であり、 \{1,2\}\times \{1,2,3\} \in \subset となるので、 \{1,2\} \subset \{1,2,3\} と書こうというわけです。

 {\rm People} をすべての人間の集合として、 \Rightarrow := \{ (x,y)\in {\rm People} \times {\rm People}\, |\, x\,\, {\rm loves}\,\, y\} と定義すると、 \Rightarrow二項関係であり、 {\rm 私} \Rightarrow 妻 かつ  妻 \Rightarrow 私 が成り立ちます。

同値関係は以下のように定義されます。

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例えば、整数全体の集合  {\bf Z} には以下のような同値関係が考えられます。

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上で定義した二項関係  \leq は同値関係になっていません。なぜなら、対称律が成り立たないためです。実際に、 1\leq 2 ですが、 2\leq 1 とはならないため、対称律は成り立たないことが分かります。また、上で定義した \subset は同値関係ではありません。なぜなら、対称律を満たさないからです。さらに、上で定義した  \Rightarrow は同値関係になりません。なぜなら、反射律、対称律、推移律が成り立ちそうにないからです(特に対称律が成り立たないのは残念です)。

●商集合

集合に同値関係を定めることで、その集合を分割できます。対象としている集合の要素で同値なものを集めた集合を同値類と呼びます。

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 例えば、上で整数全体の集合  {\bf Z} 上に同値関係  \sim_2 を定義しましたが、これを使うと以下の同値類が作れます。

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同値関係  \sim_2 の定義から以下が成り立つことが分かります。

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これは同値関係  \sim_2 のもとでは、整数全体の集合  {\bf Z} は [0] と [1] によってなる事を意味しています。つまり、以下が成り立ちます。

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このように、集合  S に同値関係  \sim が定められると、その集合を同値類によって直和分解できます。

同値類全体の集合を商集合と呼び、以下のように書きます。

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例えば、 {\bf Z} \sim_2 による商集合は以下のようになります。

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このように商集合は集合の集合になっています。

●同値関係による写像の分解

 S/\sim の要素である  a\in S の同値類を  \bar{a} と書くことにすると、以下の  S S/\sim への自然な写像と呼ばれる写像を定義できます。

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二つの集合間の写像が与えられると、その写像を使って同値関係を以下のように定義できます。

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この同値関係を使うことで、写像が以下のように分解できます。

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とくに、写像  f全射であるなら以下の可換図式が得られます。

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●参考文献

 記事を書くにあたって、以下の本を参考にしました。

集合・位相入門

集合・位相入門

 

 

凸解析

この記事では最適化理論の基盤となる凸解析の理論を解説します。

最適化問題とは

目的関数と呼ばれる関数  f:{\bf R}^n\rightarrow {\bf R} を制約条件  x\in S \subset {\bf R}^n のもとで最小化する問題を最適化問題と呼びます。特に、 f が凸関数で、 S が凸集合である時、凸最適化問題呼びます。凸最適化問題は効率的に解く方法がたくさん研究されています。

●凸集合と凸関数と凹関数

 次の性質を満たす集合を凸集合と呼びます。

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つまり、ある集合の任意の2点を結んだ線分がその集合に含まれるなら、その集合は凸集合です。凸集合と非凸集合のイメージ図は次のような感じになります。

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次の性質を満たす関数を凸関数と呼びます。

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凸関数と非凸関数のイメージ図は次のような感じになります。

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凸集合と凸関数はエピグラフという概念を通じて関係付けることができます。

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例えば、次のようにエピグラフを図示することができます。

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 凸集合と凸関数は次の関係があります。

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凸関数は最小化のしやすい関数ですが、最大化のしやすい関数としては次の凹関数があります。

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●狭義凸関数

凸関数は最小化しやすい関数ですが、最小値を与える点は一つとは限りません。最小値を与える点が存在すれば一つである凸関数を狭義凸関数と言います。

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狭義凸関数だからといって、最小値が必ず存在するとは限りません。最小値の存在しない狭義凸関数の例としては  x e^x があります。

 ●凸集合と凸関数の性質(極一部)

任意の数の凸集合の共通部分は凸集合になります。

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ある集合上の点によってパラメトライズされた凸関数は、そのパラメータについての上限を取っても凸関数となります。つまり、以下が成り立ちます。

f:id:ogyahogya:20160518163936p:plainこれにより、凸関数の共役関数が凸関数になることが保障されます(共役関数は今度紹介します)。また、これが、こちらの大偏差原理に関する記事で紹介したレート関数が凸関数になる理由です。これが成り立つことは次の関係式より分かります。

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実際に、 f(x,y) x について凸関数なので、 {\rm epi}\, f(\cdot,y) は凸集合となり、凸集合の共通部分は凸集合であることから  {\rm epi}\, g も凸集合となる事が分かり、その結果  g は凸関数となることが分かります。上の関係式は以下のように証明できます。

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凹関数に関しても次のように同様の関係が成り立ちます。

f:id:ogyahogya:20160518172353p:plainこれにより、ラグランジアンから双対関数を定義したときに、双対関数が凹関数になることが保障されます(ラグランジアンと双対関数は今度紹介します)。

微分可能な凸関数

微分可能な凸関数は次のように特徴付けられます。

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これは

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を意味していて、

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というような関係にあるということです。

また、微分可能な凸関数の最小値を与える点は勾配がゼロになる点です。

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●勾配情報の重要性

微分可能な関数  f(x) は勾配  \nabla f(x) を求めることができます。勾配の情報は関数の最小化を考えるにあたって便利です。このことを実感するために、次のようなユークリッド空間上の制約なしの最小化問題を考えましょう。

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ただし、目的関数 f微分可能な凸関数であるとします。この問題を解くためには、現在の点を x_k としたときに f が減少する方向に進んでいけば良いです。つまり、

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 \eta_k f の減少する方向であれば良いわけです。目的関数  f が減少する方向を調べるには点  x_k から微小に動いたときの  f の関数値がどのように変化するかを調べれば良いわけで、そのようなことを調べるためには

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 t=0微分すれば良いです (  g_{\eta_k} t=0 での微分 f の点  x_k での  \eta_k 方向の微分を意味しているので)。 そこで、関数  g_{\eta_k} t=0 での微分を計算してみると

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となります。よって、現在の点  x_k から  \nabla f(x_k) の逆方向に進むと目的関数  f は減少するということが分かります。このことをもとに、進行方向を表す  \eta_k

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とした最適化アルゴリズム最急降下法と呼びます。目的関数  f微分可能な凸関数であれば  \nabla f(x_k)=0 が点  x_k で最小値を取っている証となるので最急降下法のようなアルゴリズム \nabla f(x_k)\approx 0 となるまで単純に反復すれば良いということになります。このように勾配情報は凸関数の最小化を実行するにあたって重要な情報となります。

●劣微分と劣勾配

上で勾配情報は凸関数の最小化を実行するにあたって重要だと述べましたが、凸関数は必ずしも微分可能であるとは限りません。例えば、 |x| は凸関数ですが、 x=0微分可能ではありません。しかし、勾配のようなものを微分可能でない凸関数に対しても定義することができます。まず、微分可能な凸関数  f の点  x での勾配  \nabla f(x)エピグラフ  {\rm epi}\, f の点 x における支持超平面を特徴付けたことを思い出しましょう。この支持超平面は  \alpha= f(x)+\nabla f(x)^T (y-x) を満たす点  (y,\alpha) から形成されていました。微分可能でない凸関数  fに対しても、エピグラフ  {\rm epi}\, f の点 x における支持超平面を考えることができ、その支持超平面を特徴付ける「勾配のようなもの」の集まりを微分と言います。

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そして、劣微分の要素である「勾配のようなもの」を劣勾配と言います。

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劣勾配は通常の勾配の一般化になっていることが次の性質が成り立つことから分かります。

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つまり、凸関数が微分可能だったら劣勾配は勾配と一致するというわけです。また、ある点における劣微分がゼロを含んでいたら(劣勾配にゼロのものがあったら)、その点で関数は最小値をとります。

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微分の計算方法を具体例で示しておきます。

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上の |x| という微分可能でない凸関数は、スパースな解が期待できるような最適化問題(最適解の成分はたくさんゼロになると期待できるような問題)によく利用されています。

●参考文献

(1) もっと数学的に細かいことが書いています。

非線形最適化の基礎

非線形最適化の基礎

 

 (2) スパースな解が期待できるような最適化問題について解説しています。

スパース性に基づく機械学習 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

スパース性に基づく機械学習 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

 

 

共役作用素

この記事では今後の記事を書くために必要となる共役作用素について簡単にまとめます。共役作用素とは次のように定義される線形作用素です。

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正確には上の  T の定義域は  H_1稠密である必要があります。そのときに, 上の  T^* が一意に定まります。

有界線形作用素  T の作用素ノルムと  T^* の作用素ノルムは一致することが示せます。ここで、線形作用素の作用素ノルムとは

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のことです。これは、

ogyahogya.hatenablog.comで書いたリースの表現定理を利用することで証明できます。

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●参考文献

 もっと詳しく色々書いてます。

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16)

ヒルベルト空間と量子力学 改訂増補版 (共立講座 21世紀の数学 16)