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初級Mathマニアの寝言

数学は色々なところで応用可能であり、多くの人が数学の抽象的な概念の意味や意義を鮮明に知ることができれば今まで以上に面白い物や仕組みが生まれるかもしれません。このブログは数学を専門にしない人のために抽象的な概念の意味や意義を分かりやすく説明することを目的としています。数学を使って何かしたい人のお役に立てたら幸いです。

小、中、高と大学以上の数学の違いについて

小学校、中学校、高校までは数学が得意だったけど、大学で習う数学はよく分からないという人は意外と多いのではないでしょうか?大学以上の数学が小、中、高に比べて習得しにくい本質的な原因は何なのか考えてみましょう。原因が分かれば大学以上の数学も学びやすくなるはずです。

●小、中、高の数学

小、中では整数や有理数、実数を習いました。 また、中、高では、初等関数(  x^3+2x^2+1, \frac{x+2}{x^2+1}, e^x, \log x, \sin x)なんかを習いましたし、集合の概念も学びました。図で書くとこんな感じです。

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高校までにやっていたことを振り返ってみると主に集合の中の要素を取り出して和の計算や積の計算を練習していたことが分かります。例えば、3+5=8という計算は整数の集合から3と5を取り出して足すと整数の集合の中の8になり,  (3x+5)+(x^2+x)=x^2+4x+5 という計算は2次以下の多項式の集合から 3x+5 x^2+x を取り出して足すと2次以下の多項式の集合の中の  x^2+4x+5 になるということをたくさん練習しました。小、中、高では扱う数や関数の種類がそれほど多くないため、集合を意識しなくても理解できた(テストで点数がとれた)という人が多いはずです。

●大学以上の数学の特徴

大学以上の数学では、小、中、高のような文部科学省の定めた制限がなくなりますので一気に対象とする範囲が広がります。例えば、次のような感じの集合を対象とするようになります。

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ベクトル空間になる例としては、連続関数の全体や可積分な関数の全体などが挙げられます。連続関数というだけでもたくさん(無限に)あるのでベクトル空間がいかに抽象的な集合かが分かると思います。また、ノルム空間や内積空間はそれぞれベクトル空間に何らかのノルムと内積が定義された集合のことです。つまり、単なるベクトル空間よりもノルム空間や内積空間の方がノルムや内積という概念を通じて個々の要素の性質が分かりやすくなっています。しかし、ノルムや内積の公理を満たせば何でもノルムや内積となるのでノルム空間や内積空間というだけではかなり抽象的な集合です。滑らかな多様体代数多様体、可測集合なども抽象的な集合として定義されます。このように大学以上の数学では対象とする集合が小、中、高に比べて圧倒的に多くなり、また、抽象的になります。

●大学以上の数学はどのように議論が進むか

前述したように、大学以上の数学は扱う対象が非常に多く、抽象的になります。そこで、大学以上の数学では議論が混乱しないように、どんな集合に含まれる要素を解析するのかということをはっきりさせます。そして、集合の性質や要素の性質を写像を通して調べるのです。集合  X から集合  Y への写像というのは、任意の  x\in X に対してある  y\in Y を対応させる  f のことで、 f:X\rightarrow Yと書きます。イメージとしては次のような感じです。

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写像を使って集合内の要素の性質を調べる

写像を使うことで、素性のよく分からない集合  X の要素たちをよく分かっている集合  Y の中へ写して自分たちが理解しやすいようにすることができます。もっと簡単に言うと、難しそうな集合を我々の慣れ親しんでいる整数の集合や実数の集合  {\bf R} へ移して考えるのです。例えば、

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という  [0,T] 上で定義されたすべての連続関数の集合を考えましょう。これはベクトル空間の一例です。この集合は整数や実数の集合ほど簡単そうではありません。 C[0,T] の中の要素の大小関係を表すにはどうしたら良いでしょうか?我々は  C[0,T] という集合よりも非負の実数の集合  {\bf R}_{\geq 0} の方が慣れ親しんでいるはずです。そこで  C[0,T] の要素を  {\bf R}_{\geq 0} の要素へ写像して、大きさを表現します。このような写像の一例としてノルムがあるのです。イメージとしては次のような感じです。

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●集合と写像を意識するメリット

前述したように議論をクリアにするために対象とする集合は何かをきちんと明確にし、その集合の性質を写像を使って調べるということを大学以上の数学は行います。このような観点に立つと、一つ一つの事例ではなく無限個の対象に共通する性質を調べることができます。しかし、数学を研究する人の立場ではなく、具体的なものを作る人にとってはこの観点はどれほど有益なのでしょうか?例えば、テレビやパソコンや車や飛行機やそれらの部品などは、集合と写像を意識した汎用性のある議論だけでは作ることができません。その具体的なものに固有の性質を研究する必要があるからです。つまり、数学者以外のエンジニアや研究者には数学者の好む汎用性のある結果だけでは意味がないのです。では、数学者以外の人たちは集合と写像を意識した大学以上の数学を学ぶ必要はないのでしょうか?初級Mathマニアの意見では、数学者以外の人たちは普段の仕事で集合と写像を意識するという習慣がそれほどないのですから、その思考法を身に付ければ他の人には思いつかない発想ができるようになるかも知れません。集合と写像を意識するということで新しいアイディアを得る武器になると思います。

●まとめ

1. 大学以上の数学は対象とする集合が多くなり、抽象的になる。

2. 集合の性質を調べるには写像を使う。

3. 数学者の思考法と、それ以外の人の思考法はだいぶ違う。数学者でない人も数学者の思考法を学ぶと色々と新しいアイディアが出せるかも。

●予告

次回からは数学とは対象とする集合の性質を写像を通して調べる学問であるということを意識しながら色々な概念の説明をしたいと思います。はじめのうちは色々な分野に応用を持つ確率や統計の話を集合と写像の言葉を使って説明したいと思います。